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カブと私。第二話 淡路島を一周する

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朝5時。
まだ誰もいない店の駐車場で、カブのエンジンをかける。
いつもの仕入れへ向かう朝とは少し違う。今日は仕事ではなく、淡路島へ向かう日だ。
少しひんやりした空気の中を走り、明石へ。
7時過ぎ、明石に到着。
フェリー乗り場には、ライダーは私ひとり。乗り場は通勤、通学の利用客でいっぱいだった。
ジェノバラインを利用するのは初めて。
この場所で、ひとりだけ浮かれている自分が少しおかしかった。
やがてフェリーが到着する。
緊張しながらカブを船に乗せる。
たったそれだけのことなのに、とても新鮮だった。
そうこうしているうちに、船は静かに岸を離れていく。
私は屋上デッキに座り込んだ。
海風を受けながら、ゆっくりと遠ざかる明石の街を眺めていると、日常も少しずつ小さくなっていく。
私は、この時間が好きだ。
橋を車で渡れば、あっという間に着く。
でも、カブでフェリーに乗り、海を渡る。
その少し遠回りな時間が、旅を特別なものにしてくれる。
淡路島に到着。
今日は何も決めていない。
ただ、島を一周するだけだ。
海沿いを走り、山を越え、小さな港町を抜けていく。
気になった場所で止まり、景色を眺め、また走り出す。
途中で立ち寄ったのは、おのころ神社。
静かな境内を歩き、深呼吸をする。


阿那賀海岸では、ただ海を眺めていた。


そして昼食は、以前から気になっていたハサミキッチンへ。
その土地の空気を感じながら食べる一食は、なぜかいつも少しだけ美味しく感じる。


110ccのカブだからこそ見える景色がある。
速さを求めるバイクではない。
だからこそ、潮の香りや、田んぼを渡る風、漁港の静けさに気づくことができる。
急ぐ理由がない。
目的地を急がない旅というのは、思っている以上に贅沢なのかもしれない。
島を一周し、再びフェリーに乗る頃には、少しだけ心が軽くなっていた。
特別なことをしたわけではない。
ただカブで淡路島を走っただけ。
それなのに、なぜか満たされている。
たぶん私は、どこかへ行きたいのではなく、
「カブで走る時間」そのものが好きなのだと思う。
カブと私。
遠回りも、また人生の味になる。

次回へ、つづく。

 

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